償いノ真夏─Lost Child─
太陽が照り付ける八月。
夏祭りに行こう、と言い出したのは夏哉だった。
唐突に言われたので、真郷は首を傾げた。
「祭りなんて、あるの?この村」
小さい頃の記憶にも、夜叉淵で祭りに参加したというものはない。
遊びに来るといえば大概は夏なのだから、今まで知らなかったというのもおかしな話だ。
「あるよ、お祭り」
答えたのは、小夜子だった。
「五年に一度しかない特別なお祭り。御夜叉(おんやしゃ)祭りっていうの」
「おんやしゃ?」
眉を寄せた真郷を、夏哉が笑った。
「そっか、真郷は知らないんだよな。御夜叉祭りっていうのは……」
御夜叉祭り、夜叉淵村。
そもそも、この村にはやたらと『夜叉』という単語が付いてくる。
その、由来というのが。