恋のはじめ




「え・・・・?」




何故か驚いた顔をする咲希に、藤堂も同じ顔をする。




「ん?どした?あ、もしかして俺何かまずいことでも言った!?」





「い、いえ・・・・」





顔が緩んでしまうのを必死で隠そうと下を向くが、藤堂が覗き込んでくる。





初めてだったのだ。




誰かにそう言ってもらえること。




霧江と春彦と暮らしていたと言えど、ずっと一人で生きてきた咲希の心が軽くなる。




大変だったんだ・・・・





辛くて、苦しくて、誰かに分かってもらいたくて。




藤堂だって咲希の辛さを完全に理解した訳ではない。




むしろ想像で「大変」だと言ったのだ。




そのくらい咲希だって分かってる。






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