恋のはじめ
力強く藤堂の羽織の裾を握る咲希は、いつもの何かを警戒するような瞳ではなく、不安で今にも消えてしまいそうな表情だった。
「で、でも・・・・」
「お願い・・・・ここに居させて・・・何でもするから」
・・・・・あれ?
私なんでこんなにも縋り付いているんだ?
一瞬、冷静さを取り戻し、そんなことを考えてしまった。
でも、ここに居たいのは事実。
縋り付いてでも。
だけど、何かが違う。
ここに居たい理由が。