恋のはじめ
「先に質問をしたのはこっちだ。何をしている」
険しい表情の斎藤に、咲希が女だということを言ってはいけないと動いた結果、藤堂がぎこちない口調で説明を始めた。
「ただ話してただけだよ!!ねぇ咲希」
「え・・・」
突然話を振られ、慣れなれしいなと一瞬不満な顔を見せる。
「ならば何故こいつは泣いている」
「は!?泣いてないから!!」
的確な質問を突きつけられたが、藤堂が慌てる間も与えず、咲希がそう叫んだ。
しばしの沈黙の後、斎藤が「だったら何故・・・・」と口を開いた時だった。
「おーい」と聞き覚えのある声が近づいてきた。
聞き覚えのあるというか、もう聞き飽きた、そんな声。
咲希はハッと我に返り、勢い良く振り向いた。