恋のはじめ
「平助ー」
そう呼ぶ声が聞こえ、近づいてくるのが分かる。
「左之さん?」
藤堂が呟く前に、咲希もその声の主が原田だということに気付いていた。
新選組幹部の声を覚えてしまったことに、咲希は入隊してある程度の月日が経ったことを実感した。
「え、呼ばれてたよね俺」
ずっと聞こえていた声が途切れ、藤堂は咲希に確認を求めた。
「た、たぶん・・・」
言うとすぐにまた同じ声がした。
それは間違いなく原田が「平助」と叫んでいる音。
「あ、やっぱ俺だ。行こ」
「何で私も」と答える間も与えられず、咲希は手を奪われ、引っ張られるがまま原田の前に姿を現した。