恋のはじめ



「おっ平助!土方さんが何か今から幹部で・・・」



藤堂を視界に入れるのと同時に説明を始めるが、その声は段々と小さくなっていく。




「お前ら・・・なんで手繋いでんだ?」




そう指摘されて気付いたのか、「あぁっ」と慌てて手を離す藤堂の顔は少し赤かった。




藤堂の中では既に女と化した咲希なのだが、原田にとっては男同士で手を繋いでいるようにしか見えないわけで、感想として「気持ち悪っ」と毒を吐いた。




「いや、それよりだな」と思い出したかのように本題へと移る。




「幹部集合だとよ。今すぐ」




「あ、あぁ、分かった。じゃあな咲希」





さわやかな笑顔で手を振られ、呆然とする咲希。




静かになった中庭で一人しゃがみこんだ。




「よかった・・・」




ため息とも取れるような呟きを地面に吐く。




そんな中、真後ろで突然小石を踏むジャリ・・という音が咲希を敏感に反応させた。





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