恋のはじめ
___12
****
嵐は次から次にやってくる。
足音も立てず、急に大風が吹き出すように。
新選組隊士に急遽大広間に呼び出しがかかった。
咲希もそこに集まる一人となっていた。
近藤からの話はこうだった。
「今、長州の奴らが祇園祭の前の風の強い日を狙って京都御所に火を放ち、その混乱に乗じて中川宮朝彦親王を幽閉、それから一橋慶喜・松平容保らを暗殺し、孝明天皇を長州へ連れ去るという計画を立てているそうだ」
瞬間、皆ボソボソと小波のような話し声で互いに事の重大さを把握した。
「その会合が今日池田屋か四国屋で行われる」
「本命は四国屋だと思うがな」
と途中で土方の説明が入る。
池田屋には近藤率いる10名の隊士、そして四国屋には土方率いる24名での捜索という計画を発表した近藤。
咲希は沖田、永倉、藤堂を含む近藤隊を任され、静かに頷いた。