恋のはじめ



斎藤のその言葉に、どんな意味が込められているのかは分からないが、咲希を新選組隊士として否定する言葉ではなかった。



咲希は一瞬躊躇いを見せたものの、静かに「はい」という短い返事をし、部屋を出た。



どういうことなのだろう。



てっきり新選組を追い出されるかと思った。



甘い考えで、軽い気持ちで武士を名乗るなと。



出て行けと言われたら、素直に出るつもりだった。



そう促さない斎藤に疑問を持ってしまうほど、覚悟は出来ていた。



戸惑いさえ覚える感覚に、どうしたらよいか分からなくなる。




自分の情けなさに、今更斬られた肩が痛み出す。




私に、新選組へ復讐する資格などない。



そんな気持ちが心に強く押し付けられていく。




咲希はため息と共に、その場にしゃがみ込んだ。




「・・・・・・・・・・・・私の居場所は、ここじゃない」








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