恋のはじめ
「山っ崎さん・・・・」
正体は他でもなく山崎で、咲希の手を引いて音も無く歩き出した。
「迷子になるなら事前に言っておいてください」
「えっあ・・・すみませんってえ!?」
山崎の言葉に疑問を感じ、何かが違うと聞き返す。
「迷子っていうか・・・場所が分からなかったというか・・・というか、事前に報告て・・・」
ツッコミどころ満載の山崎の一言を処理し終えると、新選組に入隊して足を踏み入れたことのない廊下へと進んだ。
明りがないため、薄暗い中を二人して歩く。
話すことも特になく、気まずい雰囲気のまま奥へと連れられる。
繋がった手が少しずつ汗ばんでいく気がする。
そして、
「ここです」
言った山崎が少しだけ強く握ると、それからゆっくりとほどけた。
屯所内の奥の奥。
こんな所、分かるわけがない。
咲希は関心したように扉を見つめた。
「どうぞ」
ここに来て初めてのレディファースト。