恋のはじめ
「新選組にも死亡した者が居たんでしょう?私、見ました・・・誰のものか分からない血があちこちに飛び散って、皆無造作に倒れていて、一番奥に・・・父が居ました。もちろん息はなく・・・・」
あの日の記憶が鮮明に引き出され、咲希は唇を噛み締め、涙を堪えた。
「それから、一人の新選組隊士がやってきて・・・私が刀を向けても何も動じず、斬りかかろうとしたらいつの間にか刀弾かれてて・・・・」
復讐できない悔しさとが重なり、静かに涙を流した。
咲希の透き通った綺麗な肌が一筋の涙で光る。
「私の父は、新選組に殺されたんです。本当は私、浪士なんかじゃなくてあの時の隊士に復讐するために入隊したんです・・・・」
咲希はその場にしゃがみ込み、両手で顔を覆った。
流石に驚いている山崎はどうしていいか分からず、ただ立ち尽くした。
咲希の抑えた嗚咽が二人だけのこの空間で響く。
そして覚悟を決めたのか、ゆっくりと立ち上がり、涙を拭いた。
「私、やめます」
「え?」
突然の予想外な咲希の言葉に思わず聞き返してしまった。
「新選組をやめます」
再び主語をつけてはっきりと山崎に向けられた言葉には曇りが無く、いつになく真剣だった。
「え、ちょっと待って下さいっ新選組が・・・」