恋のはじめ
「土方さん、甘いんじゃないの?鬼の副長がそんな判断して良いと思ってるんですか?」
口角を上げて言う沖田に、「どういう意味だ」と太い声が横切る。
「現に今も咲希ちゃんは嘘をついている」
「え・・・?」
咲希でさえも沖田の発言に小さな驚きを見せた。
「私は間者なんかじゃ・・・」
そして、否定をする咲希の声に被せてこう言った。
「僕、初めから知ってたよ?この子が女の子だってことをね」
「なっ」
何とも言えない驚きの声と共に、土方は数センチピクリと体を前に動かした。
「山崎くんに島原屋の息子だって土方さんに伝えてって言ったのも僕だしね」
眉間の皺が深くなる。
「本当か、山崎・・・」
視界には入っていなかったが、土方がそう言うと、音もなく天裏から下り「すみませんでした」と静かにそう言った。
何を考えているのか終始無言の状態でいる土方に殺気を感じ、咲希は声を張った。
「待って下さい!!違います!私は誰にもっ」