恋のはじめ
そう言って入ってきたのは、三番組組長、斎藤一だった。
「もう・・・何で・・・」
不安な表情で見上げる咲希は、今にも泣きそうだった。
「あー」と今日一のため息をついて、土方は豪快に頭をかいてみせた。
「島原の処分は後だ。もちろんお前らもだ」
言って沖田、山崎、藤堂、そして斎藤を見回した。
「切腹だけは勘弁してくださいねー」
声を高くして言う沖田に、眉間にまた皺を増やして怒鳴る。
「とっとと出て行け!!」
咲希は一瞬体をビクつかせ、「すみませんでした」と深々と頭を下げた。
そして、流れに乗るように皆と一緒に土方の部屋を出た。
何を思ってか、全員廊下で立ち止まる。
気まずい空気の中、咲希が静かに声を出した。
「すみませんでした・・・」
だが、そんな言葉誰一人求めている者はいなかった。
「折角咲希ちゃんが僕たちに降りかかる処分誤魔化してくれたのに、自ら火の中飛び込んでいくなんて馬鹿だよねー」
沖田は柱に寄りかかり、腕を組んでおかしく笑った。