恋のはじめ
第六章
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「さ、斎藤さんっ!!」
あれから一言も口を開かず、もくもくと足を進める斎藤に、いつの間にか涙も止まり、息切れしていた咲希は、かすれた声でそう呼んだ。
我に返ったのか、急に立ち止まって勢いよく振り向いた。
「ど、どこ行くんですか・・・・?」
連鎖のように咲希も斎藤の急ブレーキに驚き、見上げた形で斎藤を見つめる。
「えっと・・・特には決めていない」
「は?」
急に冷静な咲希の声が挟む。
「あの、意味わかんないんですけど」
苦笑いの「笑い」すら表出できない咲希に、斎藤は更に咲希の目を点にさせた。
「駆け落ちだ」
「・・・・・・・・・・・は?」
咲希の冷たい目。
それに対抗して、斎藤はしてやったりな顔をする。
とはいえ、いつもの無表情と大して変わりはしないのだが。