恋のはじめ
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「ありえない・・・本当にありえない・・・」
太陽が完全に沈み、二人を照らすものが月明かりだけとなった頃、咲希は斎藤の隣でぼそぼそと呟いていた。
未だ繋がれた手を辿り、斎藤は咲希を見た。
「何が」
「ずっとずっと恨んでいた二年前のあの隊士とこんなことになっているなんて・・・」
悔しそうに言う咲希。
だが、斎藤は咲希の言葉に不満を感じた。
「こんなこととは、具体的にどういうことなんだ?」
「なっ」
予想外の斎藤に、言葉を詰まらせる。
斎藤が求めている言葉の察しがついた咲希は、じわじわと顔を赤く染めた。
「何がありえないって?」
いつものように無表情だが、完全に咲希の反応を見て楽しんでいる。
「べ・・・別に何も・・・」
困惑する咲希だが、斎藤は一歩も引かない。
むしろ更に仕掛けてきた。