恋のはじめ
「明日の朝だ。いいな」
「・・・・・・はい」
涙を堪え、精一杯の返事をした。
最後に「すみませんでした」と深々と頭を下げ、部屋を出た。
しんとした廊下で、斎藤と咲希の間に重い空気が流れる。
「やっぱり、帰ってこなきゃ良かったですね・・・」
悲しく笑う咲希だが、現実の辛さに涙が零れた。
必死に拭うが、溢れる方が早く、全然追いつかない。
「っやだ・・・泣きたくないのに・・・」
だが、言葉通りに泣きやめるものではなかった。
ずっと恨んで、ずっと睨んで過ごしてきた。
大嫌いな新撰組だった。
なのに、皆優しくしてくれて、助けてくれて、守ってくれて。
いつの間にか、居心地の良い場所となっていた。