恋のはじめ
もう声だけで分かってしまう。
なのに、出て行かなければいけない悔しさ。
昨晩、あんなに泣いたのに、また涙が零れそうなのを必死に絶え、皆に笑顔を振りまいた。
「今までお世話になりましたっ」
瞬間、皆驚きの表情を見せる。
初めてだったのだ。
咲希がここにきて、新選組へ笑顔を見せたのは。
ぶっきらぼうで、一人で何でも抱え込み、弱いところを見せない咲希。
唯一咲希の涙を知る者・・・・
そこに斎藤一の姿はなかった。