恋のはじめ
“私は男だ”
そう言おうとしたが、きっとこの人にそんな嘘は通じない。
咲希は必死に他の言葉を探した。
だが、あまりにも事態が早すぎて頭が真っ白になる。
否定の言葉も出ない。
沈黙のせいで、斎藤は考えを確信した。
「近藤さんには俺が行っておく。明日にでも出ていくがいい」
よいしょと体を立ち上がらせ、それだけを言い残し、その場を離れようとした。
その時だった。
「いやだ!絶対出て行かない!!」