恋のはじめ





瞬間、咲希は狂ったようにその男に襲い掛かった。




「お前が、お前が父上を殺ったんだな!」





その叫び声は、島原屋の外にいる野次馬共にまでも聞こえていた。




「何故父上を殺った!何故だ!答えろ!」




女の言葉だと思えないほどの暴言に、何食わぬ顔で男は宗弘に目を向けた。





「娘か……」





「父上が…私の唯一の頼りだったんだ。それを何故……」




悔しさを声に、言葉に込める。


しかし、男がそれに応えることはなかった。





「早くここを出ろ。まだ安全だとは言えない」





「黙れ!私は今からお前を殺す!!父上の敵を……!」





言って咲希は落ちていた刀を拾い、震える手で構えた。





血にまみれた刀は、しっかりと男に向けられていた。







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