恋のはじめ
きっともう斎藤が近藤や土方に咲希のことを話しているはず。
まだ原田の耳には届いていないようだが。
咲希はこのまま何も出来ないのかと、拳を握り唇を噛み締めた。
「お前さ、会った時から思ったけど、そんなに人睨んでばっかいんなよ。もう少し笑え」
頬をつねられ、咲希の顔が歪む。
だが、ピッと手を離すとまたふてくされたような表情に戻った。
笑えるわけない。
自分の父親を殺された集団に、笑顔を向けれるわけがない。
咲希はいつでも刀を抜けるよう、腰にさす父からの小刀を握り締め、広間へ入った。
「おー咲希。お前どこ行ってったんだ?」