恋のはじめ
だが、所詮女の力。
叶うはずがなかった。
びくともしないその男に、苛立ちを感じる。
咲希は無暗に男の胸を叩いた。
とその時、遠くから咲希を呼ぶ声が聞こえた。
その声は段々と近づき、二人の耳にも届く。
「咲希ちゃん!」
宗弘の妹、霧江だ。
つまり、咲希の叔母に当たる人。
だが咲希はそれに振り向きもせず、男を叩くのを続けていた。
「咲希ちゃん落ち着いて!」
霧江は必死に男から咲希を引き剥がそうとするが、咲希は叩くことを止めない。