恋のはじめ




自分がだんだんと不安な表情になっていっていることなど知らず、気まずい沈黙が破れるのを待った。




そして、




「だって君、女の子だよね。咲希ちゃん」





憎たらしい笑顔を作る沖田に対し、驚きの声も出ない。





「何・・・言ってるんですか?」





「ははは」とでも笑うように誤魔化しに入るが、そんなの通用するはずがない。





沖田は黙って咲希の反応をうかがった。





「わ、私は男です。だから新選組にも入って…女のはずないじゃありませんか」





少しでも落ち着きを見せようと努めるが、沖田には必死になっているようにしか見えなかった。





「嘘下手」





それだけ言うと、天井辺りをキョロキョロ見回し、「山崎くん居るよね?」とあらぬ方向へ声を掛けた。





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