恋のはじめ



すると音もなく天井から監察の山崎丞が降りてきた。



「うわっ」




驚き一歩足を引く咲希へ凛々しい目を向け、一礼した。




「初めまして、監察方山崎丞です。沖田組長の命令により、あなたについて調べさせてもらいました」




「え!?」




「誰かも分からない子を新選組に入隊させられるわけないじゃん」





腕を組み、左足に重心を掛け言う沖田から、再び口を開いた山崎に目線を戻した。





「島原咲希、島原屋当主島原宗弘の娘、つまり女であると見ています」





山崎の低い声が終わると、辺りは何もなくなったように静まり返った。




ここまで正確な情報を言われてしまっては、言い訳一つ出来ない。




どうしたらいいのか分からない。





沖田の微妙な表情からは、全く感情が読み取れない。





そして、ついに沖田が口を開いた。






「さ、土方さんのとこ行きましょうか」






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