恋のはじめ
言って手を引き、無理やり足を進めさせられた。
が、
「い、嫌です」
振り払いはしないものの、手に力を入れ小さく抵抗する。
「私、出ていきませんよ」
冷静な声で言う咲希に、沖田は立ち止まった。
「島原屋って、あの事件のとこだよね。僕達新選組が乗り込んで乱闘になった・・・」
咲希の手を握ったまま、畳を見つめて言う沖田に「そうです」と山崎が答える。
「そこでアンタの父親は攘夷浪士に殺されたんだ?」
どうやら新選組は自分たち側が殺したことを把握していないようだ。
静かな空間の中、沖田がいつもの調子より少し低い声を発した。
「君は、新選組が憎くないの?」