恋のはじめ




右手を重力に従わせ、そこで拳を握った。





「でも!!」





まだ言葉を続ける咲希に、下にあった沖田の目線が向く。





「父が死んだ原因の一つは、貴方たち新選組にもあります。なので行き場のなくなった私の居場所を作るのは当然でしょう?」





言ってドヤ顔を見せる咲希に対し、笑いが出る。





「言ってること何か違うよね」





「うるさいです。だから私は出ていきませんよ」






強気で沖田を睨むと、沖田はまるで「参った」とでも言わんばかりに顔の力を抜き、頭を抱えた。





「はいはい。好きにすれば?バレても知らないからね。さっきみたいに助けてあげないよ」





「え!?」





返したい言葉は沢山あったが、そんな短い母音しか出てこなかった。






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