恋のはじめ
「それにしても咲希って料理できたんだね」
「え!?」
不意に自分の向けられた言葉に戸惑いながら、曖昧な返事をする。
「・・・まぁ、ある程度は・・・」
「何でこんな出来んのー?」
突然話に加わってきたのは、八番組組長、藤堂平助。
「えっと・・・ずっと昔に母が死んで、それから家事は父と二人でこなしてきたので・・・」
「それでここまでうまくなるもんなのか?」
「左之さん、何年もここで料理してても全然うまいの作れねーもんな」
「きゃはは」と子供っぽい笑いを出す藤堂の焼き魚を、隣の永倉がすかさず奪う。
「あっちょっとしんぱっつあん!!毎回毎回っ!それ俺んだって!!」
「子供は黙って与えられたもん食ってればいいんだよ」
「それも与えられたものなんですけどー!!」
そんな騒がしいこの空間を、咲希は驚いたような表情で黙って見ていた。