恋のはじめ
第四章
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鳥のさえずりが耳を癒す。
太陽は既に頭の真上に来ていた頃だった。
「今日、巡察昼過ぎからだから」という沖田からの指示により、少しの空き時間が出来た咲希。
中庭に出て、生えている草木をなんとなく観察していた時だった。
「あれー?咲希じゃん?」
縁側の方から、陽気な声が聞こえてきた。
新選組に入隊して早一ヶ月となるも、警戒心は忘れていない。
声の主をなんとなく把握し、勢いよく振り返った。
「そんな睨むなって。折角仲間になったんだから、もっと愛想良くしろよー」
言いながら近づいてくるのは、腰に右手を当てている藤堂だった。
少し後ずさりするも、隣に並ぶのを許した。