ワケがありまして、幕末にございます。
「――…俺がした事が無かったことになる訳ないのに、その罪を隠した。
白い梅は紅く染まったのに、無かったフリをして、“白梅”と名付けたんだ。
俺はこんな人間なんだよ、土方」
あの後の事はあんまり覚えてない。
いつの間にか警察がいて。
いつの間にか父は骨へと変わっていた。
アタシが殺した。
父も、あの人も。
アタシはそれだけを言い続けたが、警察は信じようとはしなかった。
一応の形で、女の人が死んだのは子供の突発的な憎しみによる事故。
父が死んだのは娘を守る為に起きた事故となり、その罪は彼女のモノとなった。
それでも彼女が死んだのはアタシの罪。
外の誰にも知られずにアタシは捕まった。
あながち間違っちゃいなかったが、外の世界では違った。
男女のトラブルの末女が刀を持ち出し、男が自分を守る為に刀を振るった。
しかし勢い余って殺してしまい、自分も負った傷により死亡。
娘が偶然それを目撃―――
つまりアタシは、目の前で父が死ぬ所を見てしまった可哀想な子、として外に流された。
今思えば父はこの事を想定していたのかもしれない。
父は人並み外れていたから。
父が最期に手を伸ばした白梅には父の指紋がハッキリとあったらしく、確かに子供のアタシが殺ったとは思わないだろう。
けど偶々なのかもしれない。
いやそうじゃないかもしれない。
もう、真実は分からない。
情報は操作される。
ホントウを知っているのはごく一部なのだ。
そう、それは嘘の様で本当の話。