ワケがありまして、幕末にございます。




土方はずっと頭を撫で続けながら聞いてくれていた。




「てめぇがそんな人間ってのは知ってらぁ」


「…はぃ?」


「てめぇが見た目に反して酷ぇ人間だってのは知ってるってんだ」


「…(`ロ´ )」




何言ってんだコイツ。

この黒いのこそ酷い奴だろ。


と思った矢先、黒いのは再び口を開いた。




「…けど、てめぇは気持ち悪くねぇし、酷ぇ分不器用な優しい奴って事も知ってる」




さっきまでとは真逆の、重くて強い、だけど優しい声。




「……」


「お前は何も思わないワケじゃないだろ。
そのてめぇの意識が本能的に思う事をやめさせてるんだ。
正直に、もっと素直にさらけ出してみせろよ。
痛い、苦しい、辛いって言えよ」


「俺は…」


「それはてめぇの心であり斬った奴等の心だ。
俺等はそいつ等の魂背負っていくんだよ。
そうやって生きていかなきゃならねぇんだよ」


「…無理だよ、重い、重すぎる」


「それが人の生ってもんだ、諦めろ」




もし押し潰されそうになったら、俺も一緒に背負ってやるよ。


土方はそう呟いて、もうこれ以上は何も言わない、と言う様に煙管を吸い始めた。



人の生。


…父は幸せだったろうか。


アタシみたいな文字通り毛色の違う奴が産まれて、アタシに斬られて。




『僕を超えろ。
それがパパの幸せだ』




父を超えたかなんて、今では分からない。

もう、分からないんだ…。




「(コイツの存在は不安定で、どこか危なっかしい…なんて感じる俺は可笑しいのか?)」




夜の更けた彼の部屋、自嘲的に口を歪めたのを見る人はいなかった。


勿論、アタシを含めて。





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