ガラスのカケラ
健輔のお母さんはいつも帰りが遅く、私は入れ替わりに帰るようになっていた。

その前に帰ろうとすると、健輔の表情が曇るからだった。

彼は「帰らないで。」とか、「淋しい」とは一言も言わない。

ただスッと表情を変える。

私にはそれがたまらなく切なかった。


家に帰るのは夜ごはんギリギリで、両親には時々注意された。


でも、私には健輔の曇り顔を見る方が何だか恐かった。

つまりは健輔の笑顔を守ることが自分の楽しみになっていたのかもしれない。

そんな毎日を過ごすうちに、この先もこんな毎日を過ごしたいと思い始めていた、そんな矢先のことだった。
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