ガラスのカケラ
「おばちゃん、健輔くんは何で私を見つけてくれたのかなあ?」


おばちゃんは不思議そうな顔をした。


「あら、健輔から聞かなかったの?」


「だって、健輔くん、そんなことどうでもいいじゃんって言うんだもん。」


「そう。あの時ね、エリカちゃんのお母さんから電話が来たのよ。
エリカちゃんが家を出て行って帰って来ないんだけど、うちに来てないかって。」


「え、そうだったの。」


「そうよ~。もう、大変だったんだから。」


その時、私は初めて両親に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「それでね、エリカちゃんがいなくなったって健輔に話したら、
あの子、いきなり外に飛び出して行ったの。」


そこまで言うとおばちゃんは、ドアの向こうで寝ているであろう健輔に言うように
声を大きくして続けた。


「まったく、大事なことはちっとも話そうとしないんだから。」


その瞬間、健輔がドアを勢いよく開けて出てきた。


「何だよ!二人でコソコソ俺の悪口言って!
エリカちゃん俺の部屋もう入ってくるなよ!」


そう怒鳴るとクルッと回れ右して部屋に帰って行った。



「もう、しょうがない子ね。
ドアのそばで盗み聞きしてたのよ、きっと。」

おばちゃんはクスクス笑いながら閉められたドアを見つめた。


「ね、エリカちゃん。健輔は恥ずかしがりやだからあんなこと言ってるけど、本当は…」


ここまで言いかけたおばちゃんはハッとして、手で滑りかけた口を押さえた。


私にはおばちゃんが何を言いかけたのか何となく気がついていた。



「エリカちゃん、あの子と友達でいてあげてね。」


おばちゃんはそう言うと、促すかのように私の背中を優しく叩いた。
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