ガラスのカケラ
「あ、血が出てる」

健輔に言われて左腕を見ると、

白いブラウスの袖に血が滲んでいた。

どうやらさっきの体当たりでガラスの破片が当たったらしい。

「大変だ!」

健輔はそう言うと傷口に自分の口を当てた。

温かい感覚が傷口から体全体に広がっていく気がした。

「うちに来て!手当てしてあげる!」

健輔は私に有無を言わす間もなく手を掴んで引っ張っていった。

「大丈夫だよ。このくらい」

私は急に恥ずかしくなって、健輔の手を振りほどこうとしたけど、彼の力の方が強く、振りほどけない。

「ダメだよ。ひどくなったら大変なんだから」

グイグイ手をひいていく健輔。

いつも小柄で頼りないと思っていたのに、

この時、健輔の背中が何倍も大きく見えた。
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