伝えたい音~無音の世界で
~1ヵ月前~
偶然にも逞とは入学式の時、席が隣になってしまった。
誰も僕の事を知ってないだろう。というよりも、家からはわざわざ片道1時間半もかかる場所を選び、なおかつ地元からも遠い場所を厳選し、選び抜いた末がこの学校だ。
おまけにこの学校にはアノ科がなく、部活ですら有名ではないし寧ろ無名高校だ。
有名になる事もない。まぁ、有名だとすればこの高校はスポーツが有名だ。
スポーツ科は有名だ。
ちなみに僕は普通科である。
このまま、僕は目立たなく平凡な高校生活が遅れればいいと思っていた。
そして、
不安を漂わせながら僕は無事に入学式を終えようと祈っていたんだ。
「あのさ、ここ、座っていい?」
たった、この一言が僕と逞の美しき…友情の出会いだった。
これは自分で言っても恥ずかしいし、なんだかキモいとすら思える文章だ。
「あ、どうぞ。席は自由席だから」
「サンキュー。俺、泉崎 逞。君は?」
逞は輝かしい笑顔を見せ、僕の両手を握った。
なぜ、僕の手を握る!?
「あ…えっと…千本木 一榎(センボンギ イチカ)です」
逞の気に圧倒され、思わず名前を教えてしまった。