伝えたい音~無音の世界で

「な…何しやがんだーーーー!!」

流石の僕も切れて、思いっきり逞の鳩尾に鉄拳を喰らわせ、見事にクリティカルヒットさせた。

うん、流石にこれは痛いかもしれないが、死んでもこれは仕方がないことだ!
僕は悪くない!これは正当防衛というものだ。

だが、やつは生きてやがった。
っち、軽く舌打ちをする僕。

「何って、頬にキスしたまでだけど?」

舌うちは無視され、飄々とし、鉄拳攻撃が当って無かったかのような態度をとる。


「…。貴様、よく見やがれ!!僕は男だ!!」
「え?」

逞は目線を下にずらた。

「あはは…またまた。なんかの冗談だろ?」
「僕は男だ。お・と・こだ!」
僕は念を押した。

きっと、誰もがこの会場で僕を女だと勘違いしただろう。悲しいが、入学式会場案内でも女に間違われたくらいだ。

「性別間違えてない?」
「残念だったなー。戸籍上においても生物学上においても僕は男だ。」
「これって何かのドッキリ?」
「全然。まったくもってドッキリではないな」
「そっか…」

ふぅーとため息をつき、逞はがっかりした様子も見せることなく。
「まぁ、いっか。男でも」とあっさりと認めやがった。






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