『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
インジェットの体格のいい身体が高価な絨毯の上に転がる。


そしてすぐに起き上がり、慌てた表情でエルンストを見た。


マリー・ルイーゼもすぐに身体を起こし、胸を押さえて震えながらエルンストを見ている。


「こんなところでやろうとはすごい度胸だな？インジェット男爵？」


「す、すまない　出来心なんだ」


相手がアルフォンス王子の側近、エルンストだと分かると絨毯に額が付きそうなくらいに平謝りに身体を伏せた。


「出来心で王室の図書室を穢すとはな」


「こ、この女に誘われたんだ！どうしてもしたいからと」


後ろにいるマリー・ルイーゼの息を呑むのが聞こえた。


「このことは追って通達する　出て行け　逃げても無駄だからな」


エルンストは睨みつけると、転びそうになりながら慌てて出て行くインジェットから視線を離し、後ろのマリー・ルイーゼに振り返った。


彼女は震える身体を、震えの止まらない手で押さえようとしていた。


「説明してくれないか？」


その声は自分の声か？と疑ってしまうほど優しく響いた。






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表紙・目次

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