『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
ハイヒールは上質なものだが、かなり履き古された物だった。


マリー・ルイーゼの華奢な足にそれを履かせながらエルンストの胸がぎゅっと何かに鷲掴みにされるように痛んだ。


なんなんだ?この痛みは……。


知らないわけじゃないこの痛み……リンが辛い目にあった時に覚えた痛みを思い出した。


「あ、ありがとうございました」


いつまでも足を離さないエルンストにマリー・ルイーゼは小さくお礼を言って足をドレスの中に引っ込めた。


そしてもう一度頭を深く下げると図書室を出て行った。


エルンストはその場で動けないでいた。


俺たちとは違う世界の女だ……ほっとけばいい……。


「……」


エルンストは気持ちを切り替えようと目を閉じた。


閉じると、マリー・ルイーゼの姿が目に浮かぶ。


揺れ動く瞳の空色が忘れられない。


「くそっ!」


エルンストは悪態をつくと、図書室を出た。




そして……彼は彼女を追いかけた。




エルンストとマリー・ルイーゼの恋はどうなるのか……




それはまた後の話……。


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