『王恋』☆ハロウィンは恋ざかり☆
「こ、このことはアルに――」


上ずった声でやっと話しはじめると、フェリクスにさえぎられる。


「まったく……ずっと一緒にいて私だと分からないとは……」


「!」


アルの声にリンは心臓が止まりそうなほど驚いた。


「……ア……ル……?」


リンは小首を傾げながら、マスクを外すフェリクスを見ていた。


髪をうっとおしそうに指を入れて動かす。


「あ……」


リンの大きな目が更に大きく見開く。


「私の勝ちだね、リン」


にっこり微笑むアルだったが、リンを見て笑みが止まる。


リンの涙から大粒の涙が溢れ出ていた。


「リン?」


「も、もう……今日は……ひっく……会えない……と……アルのバカぁ……」


フェリクスに化けてずっと一緒にいたことに腹を立てるよりも、会えなかったことが辛かった。

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