わたしとあなたのありのまま ‥2‥


 お会計を済ませて店を出た。

 やっぱり、というか……
 予想していた通り、田所が奢ってくれた。

 レジで「払う」と言い張る私を、「後でいい」と厳しめの口調で言い放って黙らせ、結局、店を出た後もお金を受け取ってはくれなかった。

「たまにはカッコつけさせろって」

 そう言ってただ、田所は笑った。


「思ったんだけど」

 しんみりと、田所が口にした言葉が夜の闇に溶けていく。

「俺、ほのかに彼氏らしいこと何もしてねぇなって」

「そんなことない」

 弱々しく反論すれば、「そんなことあるだろ?」と頭を上からクシャリと優しく押さえられた。

 見上げると、
 田所の横顔は、今にも泣き出しそうで。
 それなのに笑っていて。


 切なくて、苦しくて――
 それ以上何も言えなかった。


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