わたしとあなたのありのまま ‥2‥
田所は酷く怠そうに、腰掛けていた机の横にぶら下がっている鞄から教科書を取り出すと、それを手に私たちの居る入口へとやって来た。
「ん」
と、相変わらずの不機嫌顔で、手にしていたそれを私に向かって差し出した。
「ありがと」
照哉くんが嘘を吐いたのだとも言い出せず、取り敢えず礼を言って受け取った。
けれど、視線は田所の前髪に釘付けで。
もっと具体的に言えば、田所の前髪を留めている『ヘアピン』に釘付けで。
端がラインストーンで可愛らしく装飾されている、アンティーク加工のヘアピン。
みなみちゃんの一番のお気に入りに違いない。
あ、駄目だ。
腹が立って仕方がない。
完全にヤキモチを焼いてしまっている。