わたしとあなたのありのまま ‥2‥


「ほのかさん。
 感情が露骨に顔に出てますよ」

 田所の低い声でそう言われ、反射的に目線を少しだけ落として、前髪から顔へと移動させれば、見慣れているはずの意地悪な笑顔。

 ドクンと心臓が跳ねた。


 色んな意味でドキリとした。

 その笑顔がムカつくほど美麗だったこと。
 私の不当でかつ汚い感情が見透かされたこと。

 愛しい人に至近距離で見詰められて、泣きそうなぐらいに嬉しいこと。


 本当に色んな意味で。



「だって……」

 だってもヘチマもないのに、そんな言葉しか出て来ない私のボキャブラリーを心底恨んだ。

 けれど田所は、

「コレが気に入らねぇんなら」

 言いながら、前髪を留めているそれを、呆気なく右手でスッと抜き取った。
 そのまま流れるような仕草で、制服ブレザーのサイドポケットに入れる。


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