わたしとあなたのありのまま ‥2‥
そして――
「ほのかの貸して」
と、私の右耳の上に引っ付いていた、飾り気もなく可愛げもない真っ黒なパッチンヘアピンを、わざわざ両手を使ってパチッと外す。
そうして、どうでも良さそうな無造作な手つきで、私から勝手に奪ったそれで再び自分の前髪を留めた。
「『前髪伸びたね』って言われたから、『邪魔くさい』っつったら、栗重が貸してくれた」
なんて。
田所は言い訳みたいなことを口にする。
ああもう、ドキドキする。
心臓がおかしいし、うるさい。
「わ、わたしが困るじゃんかぁ。
予備持ってないんだからね」
プリプリと怒ったふりをして言ってはみたものの、顔が爆発しそうなぐらい熱を持っているから、私の気持ちはきっとバレバレだ。