わたしとあなたのありのまま ‥2‥


 そんな私の動揺を愉しんでいるかのように、

「耳に掛けとけば?」

 と、田所の右手が私の右耳に向かって伸びて来る。
 たちまち狙われたそこが、更に激しく熱を帯びて。


 本当に火傷してしまうんじゃないだろうか。
 想像妊娠ならぬ想像火傷?

 田所に殺される、焼き殺される。



 と、触れる寸前、田所に『何か』が激突して、私の視界から田所が一瞬にして消えた。

 変わりに私の目に飛び込んで来たのは――


 せなくんだった。



「あ、わりぃ。
 悠斗、居たの?」

 全く気持ちがこもっていない謝罪の言葉を、突き飛ばされて二歩分ほど位置がずれてしまった田所に放ち、せなくんはニンマリ微笑んだ。


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