わたしとあなたのありのまま ‥2‥


 田所は一旦せなくんに視線をやるもすぐに逸らし、「うっざ」と眉間に皺を寄せてこぼした。


「誰が?」

 せなくんが笑顔のまま問う。

 けれどもその瞳は、全く笑っていなくて。
 というか氷のように冷ややかで、背筋がゾクリとして私の身体は小さく震えた。


「さあ?」

 せなくんを真っ直ぐ見据え、けれども曖昧に返し、「シッコしてぇ」と言い残して田所は背を向け歩き出した。


 せなくんはほんの束の間、遠ざかっていく田所の背中を眺めていた。

 けれど、私の存在に今頃気付いたかのように、

「お、髪型変えて可愛くなった秋山さんじゃん」

 などと変な形容詞を付けた名前を上機嫌で口にしながら、私たちの横を通り過ぎた。


 そうして、何事もなかったかのように教室の中へと消えた。


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