わたしとあなたのありのまま ‥2‥
「ほのかは歌わねぇの?」
フッと薄く微笑んで、低いけれど艶やかな声で聞かれ、私の心臓が驚いて早鐘を打つ。
酔った田所は、恐ろしいほどに妖艶で。
私の中の何もかも、全てを鷲掴んで、どこかへ持ち去ってしまう。
この動揺をどうしたものかと、意味もなく視線を泳がせていたら、田所の前髪に引っ付いたままの私のヘアピンが目に留まった。
「返してよ。私のヘアピン」
田所の問いには一切答えていないけれど、とにかく今はこの胸のざわめきを静めたくて、どうでも良いことを口にする。
ヘアピンが留まっている場所が私に良く見えるよう、田所は頭を少し傾けて、
「ほのか隊員、見たまえ。
彼は今も命がけで任務遂行中だ」
と、いつものごとく訳のわからない言葉を涼しい顔で吐く。