わたしとあなたのありのまま ‥2‥


 もう、本当に腹が立つ。
 どっちが我儘だよ?
 私彼女じゃん。
 病気で苦しんでいる彼氏を介抱したいと望むのって、自然なことじゃないの?


 目的地変更という選択肢は私にはなかった。
 プリプリと怒りながらも、田所のアパートへ向かって歩き続けた。


 その数分後には、田所のアパートへ到着。
 田所の部屋は二階だから、迷わずコンクリートの階段を上る。


 何故だか不意に、
 田所の部屋の隣に住んでいる『ゆき』さんが、この階段を上る時に響かせていた、コツ、コツ、というヒールの音が頭の中に蘇った。

 私が履いているのはスニーカー。
 だから、今鳴っている足音は、ペタ、ペタ。


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