わたしとあなたのありのまま ‥2‥
以前、ここですれ違ったことがある。
多分、ゆきさんの彼氏だ。
一人で何をしているのだろう?
田所の部屋の前まで来ると、その彼がゆっくりとこちらに視線を寄越した。
夕焼けのせいだろうか。
目が赤く、そして潤んでいるように見える。
戸惑いながらも軽く会釈をすると、フイと視線を私から外し、またどこか遠くを見詰めた。
けれどもなんとなく、『無視かよ?』などと毒づく気にもなれず、構わず田所の部屋のインターホンを押した。
が、予想通り田所は、ドアを開けてはくれないし、返事すらしない。
ムッと膨れてドアを睨みつけていると、カチャリと控えめな音を立てて、隣のゆきさんの部屋の扉が静かに開き、中から数人の若い男女が出て来た。
全員、真っ黒な服を着ている。
喪服?