トランキライザー

 お互い何も話さず、沈黙が走った。

「・・・前にもあったね。こんなこと」

 沈黙を破ったのは、つぐみだった。

「え?」

「覚えてない?玄関の鍵開けっ放しにしてて、どっちが悪いかって言い争ったとき」

「・・・あー、あれね。鍵が開いてて、つぐみが閉めたと思ってたら、結局俺が鍵持ったまま閉めずに出かけてた時だろう?」

「そうそう。あの時もこんなふうに沈黙したよね」

「ははっ。そうだったな」

 思わず思い出し笑いをした。
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