トランキライザー

 自分で選んだ方がいいだろうに。

「今、中に入っちゃったら、帰りたくなくなるだろうから。それに、圭斗に選んでもらった服着れるのが嬉しいから」

 にっこりと笑ったつぐみ。彼女の発言に不覚にも俺は嬉しさを感じてしまった。

「とってくる」

 つぐみの発言には何も答えず、部屋の中に入った。

 口元が緩む。思わず口を抑えた。

「ダメだ。あんなの反則だろう」

 本当に浮気以外、俺はつぐみに何も不満はないんだ。こんなにも俺を操るのがうまいのはつぐみだけだろう。

「あー、勘弁してくれよ」

 突き放すと決めた心が簡単に揺さぶられていた。
< 183 / 186 >

この作品をシェア

pagetop