トランキライザー

「え?何で?」

 顔を覗き込む葵から遠ざかるように少し後ろに下がった。

「だって、目の下クマあるし。顔色もちょっとよくないよね?」

「いや?そんなことないと思うけど」

 鋭い観察力。

「もしかしてまた彼女?」

 こそこそと小声で聞いてきた。

「・・・いや。違う」

「その間は嘘だね。あとで話し聞いてあげるから」

 あー、面倒臭い。恩着せがましい。

「いや、いいって。なんでもないから」
< 78 / 186 >

この作品をシェア

pagetop