Believe 〜大切なこと〜
「もし……もし、和也が金治だったとしたらの話だ。母親は金治が帰ってこないかもしれないって希望を失っていたんだ。金治が苦しみながらも妖怪退治をしているのに、母親が待っているんだって信じながら頑張っていたのに、母親が信じていなかったって知ったら……どう思う?」
わかりにくい質問だったかもしれない。けれども和也は質問の意図がわかったらしく、質問に答えてくれた。
「それは……やっぱり悲しいかな」
当然の答えだと思う。それでも俺はさらに質問をした。本当に聞きたかったのは、この質問の答えだから……。
「なあ、母親は悔やんでいるんだ。金治は一生懸命頑張っていたのに、信じてやれず、金治が消えた世界、そんなありもしない世界に絶望し続けた自分が情けないんだ。母親はこれからどうすればいい? 金治はどうしてほしいんだ?! 教えてくれ、教えてくれ!」
和也がキョトンとしている。物語になかった話で俺が勝手に熱くなっているんだ、そりゃ不思議に思うだろう。それでも和也は答えてくれた。
にっこり笑って――
「簡単じゃない。これからはずっと信じてよ」
――これから?
「お母さんは僕を信じてくれなかった。それは悲しいよ。少しだけね。だって、そんな心配をかけているのも僕自身だから」
和也の言い方に少し違和感を覚えたが、俺は黙って聞いていた。
「僕だって、苦しいよ。このまま帰ることが出来ないんじゃないかなって思うことがあるんだ。一人だと寂しくて、辛くて……」
和也はどこか遠くを眺めていた。一応目線の先は壁だが、和也はそれより遠くを見ているような気がした。
「でもね、僕、いつも頑張っているんだ。心配かけていることだってわかっている。だけど、いつかは元気になって帰れるって信じているから、だから……」
俺の目を見て言った。
まっすぐな、和也の大きい目を俺に向けて――。
「お兄ちゃんも、信じて待っていてくれる? 僕、すぐ元気になってみせるから」