Believe 〜大切なこと〜
胸の奥が熱くなった。
違和感にやっと気付いた。途中から、和也は金治ではなく自分自身のことを話していたのだ。
そして、今。和也が言ったのは俺へのメッセージ。絵本以外のことで俺に頼みごとをした、和也の、初めての。
「……あ、ごめんね。金治君のことだったよね。えーっと……」
和也は顔を赤くして俺の質問に答えを出そうとしていた。答えは、とっくに出ているのに。
「いや、いいんだ」
頭を撫でた。優しく、優しく。俺が昔、母親に撫でてもらったときのように。和也の頭は丸くて小さい。こんなに小さい頭に、一体どれだけの考える力を蓄えているんだろう。そんな和也に俺はどれだけ救われているのだろう。和也はきっと賢くなる。人の気持ちがわかる、いい奴に育つだろう。だから、だから――
「ああ、俺、信じるよ。和也がいつか元気になるって」
和也の顔が一気に明るくなった。恥ずかしそうに布団にもぐりこむ姿がやけに可愛らしい。
今日、初めて俺は和也の本音を聞けたのではないだろうか。苦しいって。寂しいって。でも頑張るんだって。そんな和也に俺が出来ることは、和也が元気になって家に帰ってくることを信じることだ。そうだ。今度こそ出来る。俺の世界の光が和也。そんな和也を支えるのも俺自身だから、俺は、
「今日はもう寝ようか」
「うん」
自分の病気と闘う、小さな少年の勝利を願って――。
空の星は皆自分が一番星だと言うようにキラキラと輝いている。
雲一つない空。
母親のように優しく光る満月に見守られて、俺たちは眠りにつくのであった。